──アニメではゲーム版同様に戦闘シーンで「カッ！」というカットインが入ったり、原作ファンがニヤリとするような演出が散りばめられています。

岸　 これはもう外せるわけがありません！
ゲームを遊んでいて「やだ、素敵！」とか思いながら見ていたものをなぜ外すんですか……という話ですよ。

橋野　 日付が変わるときのカレンダーの演出にはビックリしました（笑）。

岸　 あれは映像で言うとものすごい反則技で、リズムとしてはバンバンぶった切られてしまうんです。極端な話あのカレンダーが登場する度にサブタイトルが一回一回入るぐらいの効果があると思ってください。それでもやはりゲームで「素敵！」と思うものを外すわけにはいかなかったので、入れたうえで成立する作り方というところを一生懸命模索しました。

橋野　 僕らゲームを作ってる側からすると、映像やイベントの先に用意してあるのは“ユーザーが自由に動かせるキーフリーな状態”なんですよ。イベントを分割することで、ユーザーにキーフリーな状態を夢中になってやってもらうというのが狙いなんですが……それをアニメでそのままやるというのは大変だと思います。いわゆるキーフリーな状態がアニメにはありませんから、監督が繋いでいる部分もあるでしょうし、そこがこのアニメらしいというか、面白いところですよね。キーフリーの状態を作るために“キャラクターを家に帰らせて翌日を迎えさせる”というシチュエーションがあっても、監督はそれをアニメでそのままやっちゃう（笑）。

岸　 いやいや、そういう場合って物語も大きく変わるところだったりするのでそこはしっかり切らなきゃいけないんです！　例えば、雪子姫の城で千枝ちゃんがペルソナに目覚めた後、ゲーム同様、一度家に帰ってから再突入していますよね。「あのまま雪子のところまで行けば良かったんじゃ？」と思う人もいるかもしれませんが、“テレビの中に長時間いると衰弱して耐えきれなくなる”という設定がゲームでしっかりあるので、そこを無視して進めるわけにはいきません。これがもし、ゲーム上で強制的に戻されているという流れだったら、アニメで続けて描いても良かったんですが。

──深い意味があるんですね。世界観を尊重する上ではBGMも大きい役割を担っていると思います。

岸　 第１話の戦闘シーンでもクライマックスで、原作ゲームと同じく「Reach Out To The Truth」が流れるんですが、あれはメチャクチャこだわりました！いや、むしろ、アニメで使わないわけがない、と言った方がいいかな？（笑）　我々の音楽の録音作業の前には、映像の尺を決めるカッティングという作業があるんですけど、その時点ですでに私が独断で音楽をのっけておいたぐらいの確定事項だったんです（笑）。

橋野　 平田志穂子さんを中心としたOP&ED曲やアニメ新曲の劇伴とゲーム音楽が違和感なく溶け込んでる感じがして、これまた不思議な感じなんですよ。ゲームをプレイしてくれた方には同じように面白い体験ができてるんじゃないかなと思うし、こういうコンセプトのアニメはあまりないですよね。まさに“愛”でできていると言いますか。

岸　 愛以外の何者でもありません！（笑）

──ここまで原作の空気感を再現する作品っていうのはなかなかありませんよね。

岸　 よく、アニメが原作をぶち壊してしまうことを、原作○○○と言いますが、これはその逆なんです！（笑）

橋野　 なんとなくわかりますね。あまりにも愛を込めて、細部まで再現しすぎるという方向で原作を○○○する感じになっていると！（笑）

岸　 新しい表現ですね！そう、新手の○○○なんですよ（笑）。

──すっかり会話が伏せ字だらけになってしまいましたが（笑）、本当にゲームとアニメがスタッフの愛情を通じてシンクロした作品なんですね。

岸　 私自身が作品を好きということもあって、どんな形でもいいから『ペルソナ４』を綺麗に追体験できるものがほしかったんですよ。時間の都合上、何度もプレイできるほどの余裕がないけどストーリーを追ってみたいなって……。そんなときにこの話が来たので、それならば自分で作っちゃおうと！

橋野　 まさに渡りに船な状態だったんですね。

──アニメもいよいよ中盤に差し掛かりました。今後の見どころを教えてください。

岸　 アニメから作品を知ったという方はサスペンス的な展開が気になっているかもしれませんが、実はそう単純な形では進みません。ゲームのストーリーの追体験でもある一方、鳴上悠の１年間の追体験でもありますし、そうなると一貫したサスペンスという形は取れなくなります。むしろ、色々なエンターテインメント性が詰まった作品として、これからも走っていくつもりです。

橋野　 主人公のワイルドの能力も“登場人物たちの絆”と絡めて描かれていますが、そこが掘り下げられるのも楽しみです。

岸　 作品のテーマのひとつが“絆”なんですよ。そこを描くにあたって、悠のワイルドの能力は絶対に外せませんでした。アニメの中ではペルソナのチェンジ、そしてまさかの合体までやってしまいましたが、この後も「まだまだやるぜ！」というところなので、どこまでやっちゃうのか楽しみにしていてください！　あとは、ゲームの『ペルソナ４　ザ・ゴールデン』もお楽しみに。

橋野　 宣伝ありがとうございます！（笑）　アニメと比べてゲームは後発になりますが、追加要素もたくさんあるのでアニメを見ている方にもプレーしてほしいですね。尺の問題でアニメーションではこぼれてしまったという部分も、こちらにはすべて入っていますので……。そして、先ほど話題に出た格闘ゲーム『ペルソナ４ ジ・アルティメット イン マヨナカアリーナ』も来年の稼働を予定しています。

岸　 今年に続いて、来年もペルソナイヤーになりそうですね。

橋野　 そうなってほしいです（笑）。アニメに関しては開発陣も放送を楽しみに待っている状態。ぜひ最終回まで一緒に楽しみましょう。