Special
- [special interview]
脚本・作曲家 麻枝 准氏、岸 誠二監督 [第1回] -
スペシャルインタビュー2回目は、岸 誠二監督と、監督が「ペルソナ4」をプレイするきっかけを作った脚本・作曲家 麻枝 准氏との対談インタビューをお送りいたします。
「Angel Beats!」を手掛けたお二人に原作ゲーム「ペルソナ4」の魅力やそのアニメ化について語っていただきました。全2回のうち、今回は第1回目をお送りいたします。
[第1回・第2回]──アニメ『Angel Beats!』でタッグを組まれていたおふたりですが、実は岸監督がゲーム『ペルソナ4』に興味を持たれたのは麻枝さんの話がキッカケだったとか!
そのいきさつを教えてください。麻枝 そうらしいんですが……実はその辺りのことをまったく覚えていません(笑)。
岸 らしいです(笑)。
麻枝 アニメの方も岸監督が『ペルソナ4』をプレイして好きになって、オファーを受けたんだと他人事のように思っていたんですけど、インターネットを見たら俺が薦めたことになっていて「えっ!?」って(笑)。
岸 たしかに直接薦められたわけじゃないんだよね。『Angel Beats!』の現場で雑談をしているときに『ペルソナ』シリーズが面白いっていう話題が出て。私自身も麻枝さんが興味があるものっていうのは知っておきたかったから、プレイさせてもらって。そういう意味ではキッカケになったのは間違いないかな。
──雑談がすべての始まりだったんですね(笑)。
麻枝 たしか、アニプレックスの鳥羽プロデューサーと岸さんが「こんなゲームをアニメ化したい! やらせてほしい!」っていう話をしていたんですよね。『EVE burst error』や『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』とか、アニメ化したいなって。
岸 あと『DESIRE』。名作ばっかり出たよね……って、そういう所は覚えてるんだ(笑)
麻枝 そんなゲーム話の流れからなんとなく『ペルソナ』の名前が出てきたんです。
──そこから岸監督はゲームにのめり込むことに?
岸 そうですね(笑)。当然のように周回プレイをすることになりました(笑)。
麻枝 そういう話を聞いてしまうと申し訳ないんですが……。俺は1周しか遊んでいません。もともとRPGのプレイスタイル自体が“バランスブレイク”と言いますか。ギリギリで戦うのが嫌で、とにかくレベルを上げまくってからやっとゲームを進めるという形を取るんです。なので、何周もしないといけないマルチエンディング系のRPGはあまり得意じゃないですね。一回ですごく遊びたいんです。
岸 私も本来はそういう遊び方をするんだけど、『ペルソナ4』だけはちょっと違ったなぁ。1周目にバッドエンディングを迎えちゃったっていう残念な原因もあるけど(笑)。2周した上で、しっかりと隠し要素まで楽しませてもらいました!ちなみに最近では姉妹作の『デビルサバイバー2』を5周してます(笑)。前作より簡単になってるからサクサク進めて。
麻枝 俺も前作『女神異聞録デビルサバイバー』は夢中になって遊んだんですが、マルチエンディングということに気づいてクリア寸前で止まっちゃいましたね……。ヒロインの柚子が大好きなんですが、正義感のある選択肢を選ぼうとすると好感度が下がっちゃうのが超ジレンマで。主人公はしっかり主人公でありたいのに!
岸 わかる!
麻枝 結局、ひ弱な選択肢を取っちゃうんですけど(笑)。
岸 そこに限らず、本来それぐらいシビアな難易度なのがメガテン(女神転生)シリーズですから。
──『ペルソナ4』は割とライトユーザーでもサクサク遊べるように作られてますよね。
麻枝 システムが近い『ペルソナ3』に比べてもだいぶ洗練された作りになっていると思います。でも、俺が一番驚いたのはやっぱり音楽の部分ですね。普通、戦闘で流れる様な曲はマイナーコードから始まる暗めのものが多いんですが、「Reach Out To The Truth」はメジャーコードでなおかつボーカルが入っていて驚きました! 友人から音楽がいいと評判は聞いていたんですが、これはたしかに画期的だなと。
岸 私は事前情報が無かったからすごく驚いた。画面のデザインもすごく明るい印象ですし。そして、青春群像劇という題材だからこそ、遊んでいて青春が補完される。「楽しそうにしやがって爆発しろ! でも、自分もそこに行きたい!」ってつい思っちゃうんです(笑)。
麻枝 やっぱりそういう部分が魅力ですよね。
──同じく青春を題材にしているという意味では『Angel Beats!』とどこかしら被る部分もあるかと思いますが。
麻枝 ユーザー層が元々被っているというのはありますよね。リアルタイムな学生たちというより、すでに卒業して社会に出ている人たちが「ああこんな学園生活だったら良かったな」って楽しむ。
岸 そこは近いよね。もちろん、テーマ的には全然違いますけど。
麻枝 『Angel Beats!』で自分に期待されるものは“感動させる作品”でしたし、見終わった後に泣けるぐらいのコンテンツを求められすぎるというハードルはありました。でも、『ペルソナ4』は元々がRPGなので、敵に勝ってカタルシスを感じられたりもしますし、方向性は全然違いますね。
岸 オリジナルか、もともと原作がある作品かっていうのも大きな違いでしょう。前者はオリジナル作品として“泣き”を期待されていたのに対して、後者はすでにある原作の魅力をいかにして映像に落とし込むか、というのを期待されるわけですから。
──アニメを作る工程で両者で大きな違いはありましたか?
岸 いえ、作業方法という意味では変わってないですよ。『Angel Beats!』では麻枝さんがしっかり書いてくださった脚本を映像化すべく頑張って、『ペルソナ4』では元々あったゲームを映像化しようと頑張ったという意味では近いです。ただ、『Angel Beats!』の場合はオリジナル作品。『ペルソナ4』は一度世に出ている作品です。そこは大きな違いでしたね。
麻枝 俺自身、ゲームを遊んだ上でアニメ化したらどうなるのかなーってすごく気になっていた部分はありました。とくに重要な伏線が張られている原作ゲーム1日目のイベントはどういう演出にするのかなって。そうしたら、すごく良い塩梅のさじ加減で!
岸 そこはかなり悩みましたね……。まぁ、ここではまだ話せないんだけど、ゲームを遊んだ方は苦労したんだなと納得してください(笑)。
麻枝 よく仕込んでるなぁと思いましたよ。
岸 麻枝さんにそう言ってもらえるとやっぱり嬉しいですね。至近距離で「ペルソナが好き」と言っていた人を喜ばせられるかどうかは、自分にとっての密かな目標でもありましたからね。
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